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京都大学大学院理学研究科技術室は研究・教育を円滑に進めるための技術支援を専門とする部署です。

〒606-8502 京都市左京区北白川追分町 京都大学理学研究科
4号館125号室

ご挨拶MESSAGE

技術部長からのご挨拶

技術部長・理学研究科副研究科長 北川 宏

 昨年4月に理学研究科副研究科長に就任すると共に、山本潤技術部長の後任として理学研究科技術部長を務めることになりました。2009年に九州大学(理学研究院化学部門)から京都大学へ異動して以降、ほとんど技術部との交流はありませんでしたが、これも何かの縁であろうと思い、引きうけることにしました。縁というのは、私の研究生活において技術職員との大きな2つの出会いがありました。

 一つめの出会いは、私が本学理学部4回生の時でした。私は辻川郁二研究室(分光化学研究室)に所属していましたが、銅酸化物高温超伝導体が発見されるちょうど2年前に、卒論テーマとして金の混合原子価(AuI;5d10, AuIII;5d8)ペロブスカイト(CsAuX3 [X=Cl,Br,I])における超伝導探索が与えられました。4回生の卒業研究では、この物質系の良質の単結晶を得るべく、ブリッジマン炉の製作を行いました。大学図書館でブリッジマン炉に関する資料をあさり、貧乏な研究室だったので当時七条にあった土建屋(資材屋)まで行き頭を下げてアスベスト土管の切れ端をタダで貰い、炉心管を削り、カンタル線を巻き付け、耐熱セメントでかため、カオールを詰め、硬質アスベストを切るなどして、自作しました。その時に、いろいろとアドバイスを下さり、工作指導をしてくれたのが、隣の物理化学研究室所属で化学教室金工室担当の網田富士嗣技官でした。技術に関して非常にプロフェッショナルであるだけではなく、丁寧に原理を含めて私に指導してくれる教育者でもありました。お陰様で良質の単結晶を得ることが出来、電気伝導度の実験を行ったところ、残念ながら絶縁体(>108Ωcm)であり、がっかりしたことを覚えています。強い電子-格子相互作用のために、バイポーラロンが実空間でAuIサイトに局在していたわけです。そこで超高圧をかけて局在化しているバイポーラロンを結晶内で動かそうと考えましたが、自分の研究室にはそんな装置は無く、しかし、奇しくも隣の物理化学研究室には日本国内で初めて7 GPaの超高圧を達成した古い装置(10万気圧キュービックアンヒ゛ル装置)がありました。当時の物理化学研究室には既に固体の高圧研究をしている教員がいなかったにもかかわらず、網田技官がこの歴史的な装置の維持管理に努められていたお陰で、まだ現役バリバリの装置として稼働させることが出来ました。また、この装置使用の指導を丁寧にして下さったお陰で、圧力誘起逐次構造相転移や圧力誘起金属転位、希有なAu(II)原子価の実現の発見につながり、論文も網田氏と共著で発表し、博士学位を取得することが出来ました。

 第二の出会いは、その後、京都大学から分子科学研究所へ就職した時でした。私は、研究系助手としてでは無く、施設系助手として装置開発室に着任しました。分子科学研究所では、研究支援業務が主体である施設系の助手には任期が附されていませんでしたが、施設系助手にも関わらず研究に専念しても良いポストが初めてでき、私はその第一号でありました。したがって、2年+延長1年の任期付きの短期助手でした。しかしながら、お陰様でこれまた非常に希な体験をすることになりました。当時、装置開発室には、工作室、回路室、ガラス細工室の3セクションに分かれており、10名の技官が配置されていて、加えて、助教授1名、助手2名、短期助手1名の大所帯でありました。技術開発と研究支援、学術研究が一体となって運営されており、たった3年間の短い経験でありましたが、私にとっては大きな出会いとなり、その後の研究者人生に大きな影響を及ぼしています。

 さて、研究者にとってはテーマの選択が最も重要と言われています。なぜ自分は左ではなく右を選んだかということは因果律では説明できませんが、その選択に至る原因・過程というのは、自分の努力もさることながら、それまでの人生における全ての出会いの掛け算だと思います。誰を親・兄妹に持ったか、誰を友達に持ったか、誰を先生、上司、同僚、部下に持ったか、それら全てが掛け算となってその人の後の人生に及ぼすのだと思います。運が良いか悪いかはそれまでの出会いの掛け算で決まっているのかもしれません。毎日すれ違っているのに心に痕跡も残らない人もいれば、一生でたった1度の出会いであってもその後の人生に大きく影響を与える人もいます。良い出会いばかりとは限りませんが、理学研究科技術部が教員や学生、他機関の人にとって良い出会いの場になり、技術職員にとっても、その出会いからさらによいことが生まれることを願ってやみません。


技術長の挨拶

理学研究科技術長 吉川 慎

 2022年4月より、阿部技術長の後任として理学研究科技術長に就任いたしました。これまでは、研究基盤設備整備グループ長として、技術長を支える立場で技術部に関わってきましたが、それとは比較にならないくらい責任と役割が大きいポストだとあらためて実感しております。

 理学研究科技術部は設立から13年が経過しました。当技術部は遠隔地職員が全体の1/3以上を占め、各々の業務も異なる、全学的に見渡しても特異な組織です。設立当初は、互いにどのような業務を行なっているのかさえあまり理解していない関係性でしたが、少しずつ理解を深め、業務上の協力要請を行える関係性へと進化してきました。現在毎週1回Zoomを用いた連絡会を開いておりますが、この連絡会は相互理解やサポート体制を可能にし、技術支援のパフォーマンスを上げる手段として欠かせないものとなっています。

 他方、我々の共通業務に目を向けると、安全衛生巡視や社会貢献活動が挙げられます。安全巡視業務については、現在第1種衛生管理者の資格保持者が10名おり、毎年当技術部から4名(うち1名は遠隔地)が衛生管理者として選任されています。選任された職員は、研究科構内または遠隔地施設の居室および実験室について週2回程度の巡視を行なっています。2022年度は、居室187箇所、実験室74箇所の巡視を行い、研究科の安全衛生の向上に寄与しました。

 社会貢献活動については、遠隔地施設で実施されている京大ウィークスなどの施設公開において、当技術部の職員が企画・運営などの中心的な役割を担っており、さらに、現地からの要請に基づき北部キャンパスの職員も遠隔地施設に派遣され、展示や解説などの協力を行っています。また、理学研究科附属サイエンス連携探索センター(SACRA) からの依頼による高校生向けのプログラムでは、技術職員が開発した実験を提供し、科学のおもしろさを伝えています。

 この他、2020年度からは北部キャンパス機器分析拠点の一環として、研究機器開発支援室および技術部3Dプリンタ室の設備の共同利用にも協力しており、直近(2022年度)では、工作機械関係が1360時間、3Dプリンタ関係が260時間の共用実績がありました。また、「北部キャンパス機器分析拠点セミナーシリーズ第3回」においては、ワイヤー放電加工機、細穴加工機、光造形式3Dプリンタのオンラインセミナーを当技術部の職員2名が担当するなど、共同利用の促進にも寄与しています。

 以上のように、理学研究科技術部では、協働体制を維持し、理学研究科における貢献を第1に考え、さらに技術部組織としてのプレゼンスを示し、最終的には国際卓越研究大学を目指す京都大学の教育・研究に一層貢献できる組織として維持できるよう尽力していきたいと考えています。


歴代代表のご挨拶

2020年
技術部長:山本潤、技術長:阿部邦美
2018年
技術部長:鈴木俊法、技術長:阿部邦美
2016年
技術部長:松本吉泰、技術長:阿部邦美
2014年
技術部長:平野丈夫、技術長:馬渡秀夫
2012年
技術部長:平島崇男、技術長:阿部邦美

バナースペース

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